気候変動

建築士のSDGs

「気候変動対策はコロナ禍からの脱却同様、待ったなし!」

2020年9月から始まった国連総会では、気候変動とコロナ禍からの脱却が大きなテーマとなりました。この問題を建築士の目線で考えてみます。

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気候変動とコロナ禍は、まったく別の問題のように見えます。しかし、私は、「人間の営みに起因する問題」という点で一致するように見えてなりません。

私たちは、科学技術の力で次々と不可能を可能にしてきました。車を走らせ、航空機を飛ばし、森を伐採し、田畑を広げ、家電を使い、便利で豊かな暮らしを手に入れました。その豊かな暮らしの裏側で大量のCO2が発生しました。

また、エイズやエボラウィルスの感染が広まった時、「森の逆襲」と言った人がいます。人間が自然や他の生物との関係を破壊したことで、ひっそりと暮らしていた未知のウィルスが解き放たれたというのです。

人間が自然や他の生物との関係を破壊したという意味で、気候変動とコロナ禍は、根っこの部分は同じではないかと思うのです。

産業革命以降、CO2の量は世界経済の拡大に比例して増え続けました。その結果、直近の100年間で、地球の平均気温が1.0〜1.5℃くらい上昇しました。

僅か1.0〜1.5℃? それくらいのことで何を大騒ぎしているの? とお思いの方も少なくないと思います。私もそう思っていました。

しかし、僅か1.0〜1.5℃の気温の変化がとてつもなく大きな変化をもたらします。地球の平均気温を人間の体温に置き換えてみたら分かりやすいかもしれません。あなたは、体温が1.0〜1.5℃上昇したら、平気でいられますか?

しかも、このままCO2の削減が進まなければ、100年で地球の平均気温が4〜5℃上昇する可能性があるとも言われています。数十年後に風速100mの台風が襲ってくるかもしれないと言われたら、私でなくてもビビる人は多いと思います。

国連に「気候変動に関する政府間パネル」、通称IPCCという組織があります。IPCCは、1990年から地球温暖化について各国の専門家による調査研究を続けています。2013年、IPCCの第5次報告書を受けて、世界各国がCO2削減の目標を約束したのが、あのパリ協定です。

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日本は、2013年時点のCO2排出量を、2030年までに26%、2050年までに80%削減することを国際公約としました。しかし、計画通りに進んでいないのが実情です。

さて、今回のコロナ禍で、インドでは大気汚染が改善され、10年ぶりにヒマラヤ山脈が見えたとニュースになりました。また、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の時も、一時的にCO2排出量が減少しました。CO2を大量に排出する経済活動を抑えれば、CO2は確実に減少します。

建築士として、私にできることを考えます。持続可能な開発目標、私のSDGs。

エコハウス研究の第一人者、前真之准教授によると、日本のCO2排出量は1965年を100とすると、2015年の時点で全体の増加率が約300%に対して、家庭部門(住宅)の増加率は500%を超えているといいます。

分かる気がします。冬はコタツ、夏は扇風機から、エアコンへと変化したのですから。ただ、日本人には「もったいない」の精神が引き継がれていて、24時間空調の住宅はまれで、多くの家庭はエアコンのスイッチを入れたり切ったりの間欠空調で節約しています。

それにもかかわらず、日本の住宅のCO2排出量の増加率が高いとは、どういうことでしょうか。その背景にあるのは少人数世帯の増加だと分析されています。確かにその通りだと思います。しかし私は、世帯数という量的な要因に加えて、住宅の断熱という質的な要因が大きく関係していると思います。

日本の住宅の断熱性能は、先進国の中ではちょっと恥ずかしいレベルです。5400万世帯のうち、先進国の世界標準並の断熱性能を備えた住宅は300〜500万戸と推定され、残りの5000万戸はかなり断熱性能が劣ると思われます。しかもその大半は無断熱と言っていいほどのレベル。

断熱性能が劣る住宅は、断熱性能を備えた住宅に比べ、室内を同じ温度に保つには何倍ものエネルギーを必要とし、多くのCO2を排出することになります。詳しいメカニズムはまた別の機会に書くこととして、

私たち建築士にできることは、冬暖かく夏涼しい家をつくり、快適で健康な居住環境を提供することです。断熱性能を上げると建築費が少し上がりますが、建築費の上昇分をより多くの光熱費で取り戻すのが私たち建築設計者の腕の見せ所であり、それが私たち建築士のSDGsだと思うのです。

2020年10月
プラスエム設計代表 山中省吾





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