古民家と陰影礼賛/大津宏伸

電気が無かった昔の民家の照明器具ってなんだと思いますか。

「ロウソク」も間違いではありませんが、ロウソクを使えるのは、一部の裕福な家かお城くらいのもの。昔のロウソクは大変高価なものだったらしく、多くは行燈(あんどん)が使われていたそうです。

画像の説明

行燈は木綿の芯を油皿に浸して、火を灯し、和紙を貼った枠の中に入れて使います。
油は主に菜種油で、貧しい家ではイワシの油を使ったとか。さぞかし魚臭かったことでしょう。明るさは豆電球1個くらいですから、現代の照明環境から考えれば、あり得ない暗さです。それでも慣れれば、読み書きできるものなんですね。

谷崎純一郎が『陰影礼賛(いんえいらいさん)』という随筆の中で、失われていく日本建築の陰影の美しさについて語っているように、西洋文化を取り入れるに連れ、日本の建物から陰影の美が失われていきました。

新築住宅を設計するとき、照明計画も当然行いますが、「陰影が…、光にも色や強弱が…、光の高さが…」などとモゴモゴ言っている私の話など、建築主の奥様に一笑に付されることも少なくありません。
奥様の頭の中には、天井の中心に大きな照明器具がドーンとあって、しかも蛍光色(蛍光灯の光)、全ての場所に暗い箇所はあってはならない。白い壁、大きな窓、そして夜でも隅々まで明るい蛍光色の照明…。
「大津さん!下駄箱の中が暗いです」というクレームを頂いたことも。
(愚痴になってしまいました)

もし可能であれば家をつくる前に、どこを明るく、どこを暗くするかとか、照明器具は天井付けだけじゃないとか、光の色によって気分が全然違うとか、少しだけ長年の経験を忘れて、考えておきたいものです。
照明器具のメーカーさんは、ショウルームをもっているので、行ってみると良いかも知れません。
〇オーデリック
https://www.odelic.co.jp/
〇コイズミ照明
https://www.koizumi-lt.co.jp/
〇パナソニック
http://sumai.panasonic.jp/sr/

下の写真は湘南唯一の酒蔵、熊沢酒造さんの蔵元レストラン。
築450年の古民家を移築したお店だそうです。
伺ったのが夜だったので、建物はあまり観察できませんでしたが、古民家の風情と広々とした店内と美味しいビールと料理と…、店員さんも親切だし、最高でした。
そして、暗いところは暗く、明るく照らすところは明るく、場所によって明るさが違う店内は、リズミカルな癒しの空間でした。

熊沢酒造さんの蔵元レストラン
https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_458/

画像の説明

    コメント


    認証コード9091

    コメントは管理者の承認後に表示されます。