古民家と音/大津宏伸

音の反射が強いか弱いか?残響が長いか短いか?
音響的な居心地については、設計者がうっかり見落としがちな要注意点です。
よくお店や会議室などで会話する声が、やけに響き過ぎて不快に感じたことはないでしょうか。細かく言えば、その部屋の使用目的や住み手の好みによって調整すべきデリケートな部分です。反響の程度によって、積極的な気分になったり、度が過ぎれば心が落ち着かなかったり…。

日本の伝統的な家屋は、高温多湿という気候の中で、通気性を重視してきました。
通気性が良いということは、当然ながら通音声も良いということ。室内は常に室外の音とつながっていました。日本人はそんな生活から花鳥風月への敏感な感受性を培ったと言われています。欧米の人にはノイズにしか聞こえないという『虫の鳴き声』への関心もそのひとつですね。

では、昔、欧米の人が木と紙でできていると言った(土も使ってますけど…)古民家の室内音響についてはどうなんでしょうか。
柱や梁などの角材、床や天井に貼られた板材、土壁の土、障子の和紙は、硬すぎず柔らかすぎず、大きな小屋裏空間は適度な残響を残し、室内の凹凸で音が一カ所に集中したりもぜず、古民家でジャズやクラシックのコンサートが行われるほど、優れた音響性能を持っています。

茶陶苑

以下に紹介するのは以前、ある講習会参加した時に立ち寄った川越の茶陶苑さん。
土蔵作りの古民家です。
http://www.chatouen.com/

現代人の音に対する無頓着は、伝統的な家屋を惜しげもなく捨ててしまった頃から始まったという説もあります。都会の喧騒の中では、虫の声や雨の音なんか聞いている余裕はありませんかね?

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