古民家の空間デザイン/大津宏伸

吉田兼好の『徒然草』に「家の作りやうは、夏をむねとすべし 冬はいかなる所にも住まる 暑き頃わろき住居は堪へがたき事なり」という有名な下りがあります。
昔は蒸し暑い夏をいかに涼しく過ごすかが生活の大きな課題でした。
建具にも涼しく過ごすための工夫は多く見られ、夏にはヨシズを貼った夏障子に入れ替える家もあったようです。

建築物に開口部を設け、人の出入りや採光、防風等の機能を満たすために工作物を取り付けたのが建具の始まりなわけですが、次第に機能の他に装飾性を持ち始め、江戸時代に完成した書院造りでは、壁面と連続した鮮やかな絵が描かれるまでに登り詰めました。

昔の建物は壁が少なく開放的です。柱と柱の間を建具が占めるような空間では、建具の意匠性が空間デザインのほぼ全てをカバーしたと言っても良いのかも知れません。
そこには建具職人の誇りをかけたような素晴らしいデザインが沢山見られます。

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写真は、厚木の岸邸で撮影した外回りのガラス戸ですが、これらの建具製作に注がれた大変なエネルギーを、私も同じ作り手として感じずにはいられず、思わず見入ってしまいました。

もちろんこれからの住まいは、断熱性能が高いアルミや樹脂のサッシが主流になるでしょうし、内部の建具だって、工業生産品が圧倒的多数になるにきまってます。(すでにそうですね)
ですがそんな中で、少しだけ手作りの建具を取り入れてみてはいかがでしょうか。
部屋の雰囲気がグッと柔らかくなるはずです。できればその建具を中心にインテリアを考えてみるともっと楽しいかも知れません。

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手仕事のぬくもりと、醸し出す光と影を見ていると、それだけで癒されませんか。

厚木市の古民家‐岸邸
https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/kankou/culture/temple/d020576.html

古建具は専門店で購入することができます。
(↓参考)
和物
http://e-nobiru.com/2/list_0.asp
洋物
https://www.kiya-co.jp/stock/

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