「個室」は「子失」?/飯塚オフィス
プラスエム設計・飯塚オフィスの黒土敏彦(くろッチ)です。
「個室」は「子失」??と、興味を持っていただいた読者のために12年前に、くろッチの妻がブログでつづった記事を紹介させていただきます。
我が家は今日で引っ越して丸4年。明日から5年目を迎える。
壁や天井のシナベニヤの色も、だんだんとやさしいアメ色になり、ますます「木のぬくもり」を感じる。
当時、中2から4才までのこどもたちも、高3から小2までとなり、月日のたつのは「あっ」という間だ。
我が家の家づくりがはじまった5年前、欲をいえばきりがなかった。広い土地・それぞれの個室・広いお風呂・私のドレッサー・・・・。
これらの夢は叶わなかった。
でも、一番の願いは、「家族全員の呼吸が伝わる家」。それに関しては、大満足の4年間を過ごすことができた。
我が家は、30畳ほどの大空間を、壁に納まる建具で仕切っている。
そして、その周りにロフトがある。
キッチンに立つと、部屋全体を見渡せ、子どもの様子が一目瞭然である。「うれしいことがあったな」とか、「ちょっと疲れ気味かな」・・・・など。
建具はあるものの、居間と子どもスペースは、 いつもオープン。誰がどの部屋に入ろうが、 どこで過ごそうが、誰も文句を言わない。一人っ子で個室を持ち、親が自分の部屋に入ると、文句ばかりいっていた私とは大違いだ。
ただ、ロフトだけは別。あ・うんの呼吸でそのルールは守られている。
二男のロフトには、大切なギターが飾られ、音楽雑誌が広げられている。
長男のロフトには、彼の好きな「あだち充」のマンガ本が並び、青春を満喫しているようだ。もちろん、いかがわしい本も隠されている。時々、布団をほしてやると見つかるが、これも「順調に成長している証拠」と思いながら、そっと元の場所へ・・・
思春期に入った男の子たちと、こんなふうに付き合えるのも、この 家のおかげだ。
毎日が 、家族でキャンプに行った時のように、すべてがオープンで 何でも話せる、6人の生活を楽しめたことは、親にとって、これほどの贅沢はない。
来年の春には、もしかしたら、進学して家を出ていくであろう長男との暮らしに、私自身が悔いを残さないよう、毎日の食卓や、何気ない会話を大切に胸に焼き付けていきたい。
そして、しっかり子離れできるよう、自分を磨いていこうと思う。
妻のブログを目にしたとき、私が設計した「住まい」での生活に満足してくれていることに「ほっと」しました。と同時に、「イエ」をデザインするということは、そこに住まう「ヒト」の生活そのものをデザインすることであるとの思いを深くしました。
改めて、この妻のブログを読み返し、これから出会うであろう御家族の為に、「イエ」の設計者として、また「ヒト」として、日々成し続けなければと、深く心に刻み込みました。
文:くろッチ