住宅の工事費は

どのように決まるか


住宅会社の粗利益

住宅会社の工事費には25%〜50%の粗利益が含まれています。粗利益率は住宅会社の経営方針とブランド力によって大きな差があります。

一般的に住宅会社は、最低でも工事費の25%の粗利益がなければ経営できないと言われています。成長期に比べて業務の効率化は進みましたが、成熟した産業の宿命として、様々な技術的な対応が増えたからです。

専門的になりますが、住宅のエネルギー計算を例にあげます。省エネルギー性能を示す数値の一つにUA値があります。UA値とは、住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体の面積で除した値です。値が小さいほど熱が逃げにくく省エネルギー性能が高いことを示します。

このように、成熟期に入った住宅業者は、かつての成長期とは比べものにならないほど多くのことに対応しなければなりません。エネルギー計算もそうですが、建築基準法とは別に耐震性能を割り出す構造計算、更に数々の申請業務などです。最低でも工事費の25%の粗利益はやむを得ないと言えるでしょう。

さて、筆者はオープンシステムを考案した建築士です。そして、オープンシステムの全国組織を構築したイエヒトの代表でもあります。立場上、これまで多くの建築士と対話をする機会がありました。

イエヒト会員との対話は言うまでもありませんが、各地で開催したセミナーを受講した建築士たちと対話を繰り返してきました。これから記す「粗利益率」に関することは、建築士たちとの対話によるリサーチに基づいています。

派手な宣伝・営業をせず、少人数で家内工業的に経営している住宅会社は、自社の標準仕様で受注した場合の粗利益率を約25%に設定しています。仕様の変更やオリジナルな設計を求められた場合は粗利益率を約35%に引き上げます。手間が全く違うからです。

ちなみに、住宅のフランチャイズの本部は、加盟している住宅会社に対して粗利益を35%前後に設定するよう指導しているところが多いです。そして、全国大手の住宅会社は、粗利益を40〜50%に設定しています。

セミナー後の懇親会は、受講した建築士たちの情報収集の場です。私も(さり気なく)生の声を引き出してリサーチします。
「〇〇さんの会社は、実際、どれくらいの粗利がとれているのですか?」

ある工務店の2代目若社長は(やや自慢げに)次のように答えました。
「うちはデザイン力が売りなので、高級志向のお客様がターゲット層です。価格帯は3千万円くらい。粗利はざっと1千万円ですね」

「すごいですね。ざっくり33%ですか」と返すと、
「うちは他社よりずっと手間をかけていますから、これくらいもらわないとワリに合いません」

そうなのです。必要な経費は全て粗利益という形で工事費に含めているので、設計料をサービスできるのです。住宅会社が無料で設計をしてくれると本当に思っている人はいないと思いますが。


工事原価と見積り金額

元請け業者が下請け業者に支払う工事費の合計を「直接工事費」と言います。建材や住設機器、工事現場の水道代・電気代、掃除の費用も直接工事費に入ります。ただし、社員の給料や事務所の賃料など、会社の経営に必要な経費は含まれません。

さて、直接工事費をそのまま建築主に提示すると、住宅会社が得るものは何もありません。そこで、粗利益を加えて工事費を算出しますが、内訳書に粗利益をそのまま記載しても建築主の了承は難しいので、それぞれの項目に含ませて分からなくします。

一般的(平均的)な住宅会社は、足並みをそろえたように自社ブランドを持っています。例えば「陽だまりの家」「家族が集う家」等の名前を付けて、自社の仕様を決めています。あるいはフランチャイズに加盟してブランド名のついた住宅商品を販売しています。

建材や住設機器等の仕入れ価格、下請け業者の工事価格、粗利益率のなど、工事費の算出に関してどの住宅会社も同じ営業スタイルになったのは、住宅コンサルタントとフランチャイズ組織の影響によります。

ほとんどの住宅会社は粗利益率を工事費の25〜35%に設定しています。そして、パソコンと連動させて、粗利益を含んだ金額で「工事見積書」が算出されるよう効率化も進んでいます。

また、自社の仕様に対して変更を希望する建築主には柔軟に応じます。しかし、変更を希望する部分の粗利益率を5〜10%ほどアップさせます。変更に応じると手間が増えるからです。ちなみに、駐車場、庭、塀など自社仕様の対象外となる工事も粗利益を5〜10%ほどアップさせます。
 
ここで粗利益率について補足します。粗利益率は下請け業者の工事費や仕入れ価格に占める率ではなく、あくまでも建築主に提示する工事費に占める率です。金額で示すとかなり違います。
 
ある下請け業者の工事費が100万円だとします。粗利益率を25%に設定すると125万円になると勘違いしやすいですが、正しくは133万円です。検算しましょう。133万円×25%=33万円。建築主に提示する工事費が133万円で、そのうち粗利益が33万円、下請け業者に支払う工事費が100万円です。25%の粗利益率は、仕入れ価格や下請け業者の工事費の33%に相当します。

粗利益率35%の場合はどうでしょうか? 仕入れ価格を100万円に想定すると、販売価格は154万円になります。検算すると、154万円×35%=54万円。粗利益35%だと仕入れ価格に対して54%のアップです。

住宅会社の粗利益は意外と大きい、ということをご理解いただけたと思います。ちなみに、建築主に提示する工事費は次の算定式で導きます。

工事費=仕入れ価格÷(1- 粗利益率)
 
プラスエム設計にはこのようなややこしさは一切ありません。全ての工事費、建材等の仕入れ価格がそのまま建築主に示されます。顔も価格も、家づくりの全てが見える形で進みます。見えるって、凄いことです。建築主が錯覚しません。正確に判断できます。不要な経費が排除されます。そして、ごまかしが通用せず、やるべきことをやらなければなりません。


元気を取り戻した中小の工務店

大手ハウスメーカーと同じように、中小の工務店も建材や住設機器を安く仕入れることができるようになりました。元請け経費(粗利益)を大手ハウスメーカーほど必要としない中小の工務店に「お得感」がでてきました。

さて、昔は物が大事でした。今は時間が大事です。年配の人は使いもしない物でも捨てずにおきますが、若い人は物に執着しないように感じます。物と時間の価値観が逆転したのかもしれません。その傾向は家づくりにも表れています。
 
昔の住宅は、できるだけ少ない材料で造れるように考えてありました。和小屋組みがその例です。材料が貴重で、施工の手間(人件費=時間)はそれほど高くなかったからです。今の住宅は、材料も重視しますが、それ以上に人件費を重視して造ります。手間がかかる施工は工事代金に大きく影響するからです。
 
では、今の住宅は工事費に占める「材料費」「人件費」「諸経費」の割合はどれくらいだと思いますか? ちなみに諸経費は住宅会社の粗利益に相当します。

すごくざっくり答えます。今の住宅は「材料費」「人件費」「諸経費」がほぼ同じ比率、それぞれ33%です。材料費の割合が意外に少ないと思いませんか?

何が言いたいかというと、現在の成熟した住宅産業では、大手も中小も対等に戦えるようになったということです。材料費が工事費の33%しか占めていないのですから、大手が持つ仕入れの優位性がそれほど発揮されません。

実際、住宅業界は大手も中小も材料の仕入れ価格にそれほど大きな差はなくなりました。住宅コンサルタントやフランチャイズの本部が、中小の工務店に材料の適正な仕入れ価格を指導してきたからです。仮に、大手の仕入れ価格が中小より10%安いとしたら、工事費に占める材料費の割合が33%で、それに対する10%の効果ですから、及ぼす影響は3.3%に過ぎません。

まして人件費(職人の手間賃)となると、大手だからといって安く仕入れることなどできません。塗装職人が1㎡塗る手間は、大手だろうと中小だろうと何ら変わらないからです。むしろ、人件費に関しては、大手の方が高いというのが普通の感覚です。

住宅は「地場産業」です。大手がすごいと思うのは幻想です。大手も中小も、地場の職人に頼らなければ建築工事はできません。すべてその地域の職人が施工しているのです。下請け業者として。

今の大手は、高度経済成長期に大躍進しました。組織力と情報力で中小の工務店に大きな差をつけました。国も新しい住宅産業の形として助成金などで後押ししました。やがて、あまりにも大きくなり過ぎて、中小の工務店が太刀打ちできなくなりました。

「このままでは日本の地場産業が廃れる」こう考えた経済産業省は2002年、省内に「住宅関連ニュービジネス支援対策委員会」というものを立ち上げて、中小の支援を開始しました。大手に太刀打ちできなくなった工務店をどのように活性化させるか。

そこで、住宅業界を活性化させつつある、あるいは将来活性化させるかもしれないと目されていた住宅関連ニュービジネスのプレーヤーを中心に、大学の教授が加わって委員を構成しました。

筆者も委員の一人として、2002年から2004年の3年間、毎月経産省で開かれるに委員会に参加しました。住宅関連ニュービジネスのトッププレーヤーたち、大学の先生、経産省の人たちとの交流やディスカッションは貴重な体験となりました。

世紀が変わった2001年前後、中小の工務店には未来が見えませんでした。大手に圧倒的な差をつけられ、地場産業が廃れるかもしれないと思われていました。

しかし、住宅産業が成熟期に入った今は違います。中小の工務店が元気になりました。大手と対等に戦える条件が整ったのです。効率化による生産性の向上、そして仕入れ価格の差の縮小です。むしろ、粗利益率を大手ほど必要としない中小の方が有利に展開できる状況が生まれたと言えなくはありません。

住宅の工事費を決める最も大きな要因が見えてきました。それは、住宅業者の粗利益率です。仕入れ価格の差が縮小した今の住宅産業では、粗利益率が高いほど住宅の価格が高くなります。ただし、全く同じ設計の建物であれば、という前提で。

実際は価格を比べて粗利益率がわかるほど単純ではありません。なぜなら、建物の機能・性能・材料・デザインがそれぞれ違うからです。仕様が違えば価格の比較が難しくなります。


プラスエム設計の業務報酬料

建築主に対して何も隠さないのがプラスエム設計の方針です。業務報酬料の算定方法も明らかにします。

住宅会社は工事を請け負うことで利益を確保します。ただし、粗利益は工事費に潜ませているので見えません。それに対してプラスエム設計では、工事を請け負って利益を確保することはありません。建築士事務所として技術やサービスを提供し、その対価として報酬を頂きます。

住宅会社の粗利益は見えませんが、設計事務所の業務報酬は表に現れるので、この部分だけを捉えて意図的に批判する人たちがいます。「なんてバカ高い設計料だ!」と。

それはともかく、プラスエム設計の家づくりでは、建築主がそれぞれの専門業者と直に契約を交わします。したがって、住宅会社の場合に当てはめれば、粗利益を含まない仕入れ価格で契約することになります。

それでは、プラスエム設計の業務報酬料は、一体どれくらいなのでしょうか。そして、どのように算定しているのでしょうか?

1993年にプラスエム設計がオープンシステムを始めた時は、どれくらいの業務報酬料が適切か判断できませんでした。設計事務所が行う通常の設計監理業務に加えて、住宅会社の仕事(住宅を完成まで導く)も行うという、これまでどこの設計事務所も経験したことがない業務内容だからです。

なので、通常の設計事務所としての業務報酬+住宅会社の粗利益をもらいたいところでした。しかし、それだと延べ床面積100㎡の住宅で700万円(設計監理料200万円、住宅会社の粗利益500万円として)くらいになります。それこそ「バカ高い報酬料」となり、世の中の建築主に受け入れてもらえるとは思えません。

このような建築手法はまだ誰もやったことがないので、ともかくやってみなければ分からないということで、通常の設計監理料の1.5倍でスタートしました。延べ床面積100㎡の住宅で300万円くらいです。

ところが、あまりにも業務量が膨大で、しかも煩雑です。毎日深夜まで仕事をしても、とても経営が維持できる状態ではありません。そこで、現在の報酬料に改訂したのですが、それでも決して楽ではありません。

とは言え、世の中が受け入れるかという現実があるので、頑張って業務の更なる効率化を図るか、あるいは世の中に受け入れてもらえるような状況をつくりあげるしかありません。

それでは、新築住宅の業務報酬料の算定方法を説明します。プラスエム設計の業務報酬料は、工事費に対する割合ではなく延床面積から算定します。1㎡当たり3万円で、それに基本料金の100万円を加算して算定します。具体例で計算してみます。

延べ床面積100㎡の住宅の場合は100㎡×3万円+100万円=400万円です。消費税を加算して432万円になります。200㎡の住宅であれば200㎡×3万円+100万円=700万円です。消費税を加算して756万円になります。

さて、この報酬料が高いか、安いか。皆さんはどのように思われるでしょうか?


建築士事務所の業務報酬の基準

建築士事務所がその業務に対して請求することのできる報酬の基準を、国土交通省が告示98号で示しています。

建築物の設計監理業務は多様化・複雑化しています。また、建築主からの業務に対する要求水準が高まるなど、設計事務所の業務環境は大きく変化しています。2014年に改正された建築士法22条の3の4で次のように規定されています。

「設計受託契約又は工事監理受託契約を締結しようとする者は、業務報酬基準の考え方に準拠した委託金額で契約を締結するよう努めなければならない」

さて、2019年に改正された告示98号では、建築士事務所が標準的な業務内容を実施した場合の、建築物の用途別に応じた標準的な業務量を示し、これに基づいて報酬を算定することとしています。延べ床面積100㎡の住宅の設計監理業務を算定すると次のようになります。

業務報酬料=直接人件費+直接経費+間接経費
業務量:789人・時間(告示略算表より)
直接人件費:789×0.2万円=157.8万円
直接経費+間接経費=直接人件費と同額
業務報酬料=157.8万円+157.8万円=315.6万円

プラスエム設計の算定基準400万円に比べると84.4万円安い金額です。しかし、告示98号による算定は通常の設計監理業務だけを想定したもので、家づくりを完成まで導く「マネジメント業務」は含まれていません。

プラスエム設計のマネジメント業務は、住宅業者の仕事にほぼ匹敵します。だとしたら、プラスエム設計は、住宅業者の仕事を84.4万円で行っていることになります。


住宅会社の粗利益と業務報酬料

住宅会社は建材や下請け業者からの仕入れと請負金額の差額を利益としています。それに対してプラスエム設計は、提供した技術の対価として報酬を頂きます。それぞれの業態は違いますが、住宅会社の粗利益とプラスエム設計の業務報酬を数字の上で比較してみます。

住宅会社が粗利益率を25%見込んで、100㎡の住宅を2000万円で請け負ったとします。すると、粗利益は2000万円×25%=500万円となります。

住宅業者であれば500万円の粗利益を見込むところをプラスエム設計は84.4万円で行っていることになりますが、そもそも国交省の告示98号による業務報酬の算定が高すぎるのではないか、という反論も考えられます。

住宅の設計監理料は工事費の10%というのが通り相場です。工事費2000万円なら200万円です。告示で算定した315.6万円より115.6万円安くなります。

相場の200万円が適正な設計監理料だとすると、プラスエム設計の業務報酬料400万円のうち残りの200万円が住宅業者の仕事に相当するマネジメント料です。それにしてもプラスエム設計は、住宅業者であれば最低でも500万円の粗利益を見込む仕事を200万円で行っていることになります。

ここまで住宅業者の粗利益とプラスエム設計の業務報酬料を比較してきました。設計事務所が設計監理をして、住宅業者が工事を請け負った場合も比較してみます。

設計事務所に設計監理を委託し、建築業者に工事を発注した場合は、建築業者の請負金額2000万円に設計事務所の設計監理料200万円が加算され、建築主が支払う総額は2200万円となります。まったく同じ建物をプラスエム設計が行うとどうなるでしょうか。

建築業者の請負金額2000万円に含まれている粗利益の500万円が不要になるので、専門業者に支払う工事費の合計は1500万円です。それにプラスエム設計の業務報酬料400万円を加えて、建築主が支払う総額は1900万円となります。

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建築主は、従来通りの方法で建てると2200万円かかるところが1900万円で済みます。まったく同じ建物です。これをどのように解釈すればよいのでしょうか。視点を変えて次のように考えることはできないでしょうか。

「プラスエム設計にタダで設計監理をやってもらい、そのうえ100万円もの配当金まで受け取った」と。





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① GUIDE BOOK
「家づくりをトコトン楽しむ」

お金だけ用意して、ただ完成を楽しみに待つことしかできなかった建築主が、家づくりのあらゆる過程を楽しむために何をすればいいか、具体的に著しました。そして、建築主が知っていたらより一層家づくりを楽しむことができると思うところは、業界のありのままの姿を(いくらか突っ込んで)描いています。A4版64ページの大作(笑)です。


② 会社案内
「家づくりを楽しむ」

壁塗りに挑戦した家族、木部の塗装をやり遂げたご主人など、それぞれに楽しみ方は違いますが、家づくりに積極的に参加して、こだわりを実現していく姿は皆さんに共通しています。第1章と第2章で、家づくりの過程と楽しみ方をできる限り詳しく再現しています。A4版36ページ、それなりに大作(笑)です。


③ マンガ小冊子
「価格の見える家づくり」

住宅会社に全て任せるのではなく、建築主の思いを的確に反映させるにはどのような方法が最適か。このような考えで進める建築を「オープンシステム」と言います。マンガに登場する山田さん、小出さん、熊野さんは架空の人物ですが、二つの実話を合体した内容となっています。A5版36ページ、さらっと読めます。


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